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ロキは少しの動じた様子もなく、
「オイラの身分云々の話は何の事か解らないけど、バンケルク将軍からは王女様に直接渡すように言われているので、おばさんに手紙を渡すわけには行きませんね。」
と言った。
「おばさん・・・・・・」
そういわれた女官は歳の頃は三十歳前後と思われたが、若干顔を歪めて『失礼なガキね』という顔をすると、
「聞き分けのない子供だ事。仕方ありません。捕らえなさい。」
と門衛に命じた。
その言葉を聞くや否や、ロキは素早くハンベエの背後に逃げ込んで言った。
「ハンベエ、出番だよ。」
ロキを捕らようと動きかけた門衛達は、ハンベエの姿がはじめて目に入ったかのように、
「なんだ、おまえは?」
と驚いた顔をした。
「ハンベエはバンケルク将軍がオイラに付けてくれた護衛だよ。英語で言えばボディーガードだ。」
ロキが素早く言った。出任せもここまでくれば大したものである。
しかし、勝手に護衛にされたハンベエは、ロキの言葉を別に否定するでもなく、腕組みを解いて腰の『ヨシミツ』に手を掛け、門衛達に身構える風情を見せた。
「あなたはバンケルク将軍の手の者ですか?」
女官がハンベエに向かって尋ねた。
ハンベエは門衛を油断なく目で制止しながら、女官の方を見もせず、
「バンケルク将軍は知り合いだが、俺は別に将軍の家来じゃない。護衛を頼まれただけだ。」
とぬけぬけと言った。
「その子供に手紙を渡すように言ってくれませんか?」
「生憎、俺が頼まれたのは護衛の役割だけでね。手紙をどうするかは、この小さな使者の決める事さ。
「シンバ様、この若造共々ひっ捕らえましょうか。」
門衛が女官に向かって言った。女官の名前はシンバというようだ。
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