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「かまいません。それより、使者の方、ご苦労でありました。面を上げて下さい。私が王女のエレナです。」
王女は優雅な挙作で座ってロキに言った。
ロキは王女の言葉に従ってようやく顔を上げ、王女の顔を見たが、ボーッとなってしまった。美しい王女に直接見つめられて、少年アガってしまったらしい。
「どうしました、何か不審な事でもありますか?」
王女は優しげにロキに尋ねた。自分の美しさ(どんな謙虚な女性でも、美人は自分の容貌に自信を持っており、その美しさに驚く他人の心の動きを見逃さない生き物らしいので)に言葉を無くしたロキに好意を持ったようだ。
「失礼しました。これがバンケルク将軍から預かった手紙です。」
ロキは赤くなりながらも、進み出て、片膝立ての姿勢で王女に手紙を差しだして、素早く最初の席に戻った。
王女は手紙を開封して、黙って読んでいたが、やがて左右の武人に、
「使者の方と少し話があります。人払いをして下さい。シンバ、あなたも下がりなさい。」
と言った。
シンバや武人は何か言いたそうだったが、王女の決然とした態度がそれをさせない。襖を閉め、立ち去った。同時に回りを取り囲んでいる兵士達の気配が退いて行くのをハンベエは感じた。
自分も座を外すべきかと立ち上がりかけたハンベエを王女は手で制して、
「あなたは構いません。」
と言った。
ハンベエは無言で座り直した。
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