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ハンベエも王女の美しさに驚いたが、それよりもっと驚いた事がある。
(こいつ、かなり強い。)
とハンベエに感じさせた事である。先程の門衛など話にならない。護衛に従えていた武人よりも、目の前にいる王女の方が手強いとハンベエは感じた。
(はて?、王女というのは、こんなに腕の立つ代物(しろもの)だったかな。)
何しろ山から出てきたばかりで、さほど世間に通じている訳ではないが、それでも、世間並みの知識は一応ハンベエにもある。その類型には、この王女は当てはまらないようだ。
「使者殿のお名前はなんと言います?」
王女がロキに尋ねた。
「オイラはロキって言います。こっちはハンベエ。」
「ロキさんですか。そして、ハンベエさんですね。この手紙の中身を知っていますか。」
「中身は見てないから、知りません。おおよそ、想像はつきますが。・・・・・・あ、ハンベエはその手紙については全く何も知らないですよ。」
「ふふ、知らぬ顔のハンベエさんですか。」
王女は悪戯っぽく笑った。
「ハンベエさんは、バンケルク将軍のお知り合いだそうですが、どういった関係ですか。」
そう問われたハンベエはチラとロキに目をやった。 ロキは、頭をかきながら、
「王女様、ごめんなさい。全くのウソっぱちです。ハンベエとは今日知り合ったばかりで、バンケルク将軍とは何の関係もありません。子供のオイラ一人じゃ、体よく追っ払われて、王女様に手紙を届けられないと思って、付いて来てもらっただけです。」
と正直に言った。
「そうですか。ロキさんは中々の知恵者ですね。さすがにバンケルク将軍が手紙を託すだけの事はあります。」
悪びれないロキに王女は、すっかり好意を持ったようだ。打ち解けた様子で話しかける。
「ハンベエさんも、おまえらの二人や三人斬るのは雑作もないと見栄を切ったとか、中々の役者さんですね。」
王女はハンベエの方を見て微笑みかけた。
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