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両手にまだ剣をぶら下げたままで、門番の所まで静かに歩いて行った。
門番は『ヨシミツ』と『ヘイアンジョウ・カゲトラ』を大事に抱え込んで、座り込んでいた。ハンベエの姿を見ると、呆れたような目付きをしたが、恭しい態度で刀を返した。
ハンベエは手にしていた剣を漸く打ち捨てて、愛刀を受け取って身に付けた。
打ち捨てた剣は何の愛着も無い物であったが、今日の今日、不用心で命を落とすところだったと痛感した為であろう。中々手放せられなかったらしい。
その後、ハンベエは言葉通りパタンパで王女軍を監督しているドルバスの下へ真っ直ぐに向かい。貴族達との顛末を報告した。
「いやはや、あの連中。余程俺の事を憎んでいたらしく、顔を合わせるなり殺し合いになっちまって。」
とハンベエはあくまで突発的な諍いだと惚けた。
降伏兵を監視監督する立場のドルバスとしては、モルフィネスと同様、その処分は王女の裁可を待つべきであり、それまで何事も起こさせないように貴族達の安全を図る事を責務と考えていたようで複雑な表情になった。が、事の始めから影に日に支えて来たハンベエがやらかした事であるので、文句を言う事も出来ない。
しようのない奴だと言う眼で見詰めるばかりであった。
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