3518人が本棚に入れています
本棚に追加
「王女殿下の一番の忠臣で軍の総司令官であるハンベエを逮捕するとはどういうつもりだ?」
「ふう。誰も彼もお家の一大事と飛んで来る。ハンベエへの面会は禁じていないから、事の次第は貴公が直接ハンベエに会って説明を受けられよ。」
モルフィネスはあまり愉快でない顔付きでドルバスに言った。もう沢山だと顔に書いてある。
「ハンベエに会えるのか?」
「ああ、ハンベエなら自分の執務室にいる。ハンベエ逮捕を公表してから、兵士達の面会が引っ切りなしだ。」
「・・・・・・。」
モルフィネスの返答にドルバスは狐に摘ままれたような表情をしたが、会えるのであれば委細は会って話を聞いてからである。
単独で、城門に姿を現したモルフィネスの態度に相手方への警戒心は薄れていたが、尚愛用の薙刀を手に持ち、警護の兵二人を引き連れて王宮内のハンベエの執務室へドルバスは向かった。
でもって、ハンベエから逮捕の件について説明を受けたドルバスは他の兵士と同様に拍子抜けになった。
それでも尚モルフィネスは信用し切れんと、ドルバスはハンベエの身柄を自分の保護下に置く事を提案した。しかしながら、ハンベエの返答は否であった。腰の『ヨシミツ』を指差し、これが有る、と言い、更にモルフィネスが俺を害しようとしても、兵士の大半がハンベエに与しそうな現状では無理筋だから、怜悧なモルフィネスはそんな事はしない。
とドルバスを説得してパタンパに戻るよう促した。
ハンベエ逮捕の報に素っ飛んでは来たが、逮捕の実情を目の当たりにしてドルバスはスゴスゴと元の任務を継続しにパタンパへ戻って行った。
このように、ハンベエの逮捕は王女軍を一時的に揺るがしたが、委細は王女エレナの裁定を待つという形ですぐに収まった。
だが、この報を受けて全く別の思惑を懐いた者が居た。
南方のカクドームを拠点に半独立勢力となっているキューテンモルガンである。キューテンモルガンはまだパタンパへの参戦途上に有り、事前偵察に送った斥候兵からの急報によりハンベエ逮捕を知った。
「一体、何が起こったのか。」
と彼の人物は困惑と興奮の入り混じった複雑な表情をケーシーことクラックに向けた。
最初のコメントを投稿しよう!