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「ヒルネー、お前。王女軍総司令官のハンベエ殿と面識が有ると言ってたなあ。」
顔を出したヒルネーにキューテンモルガンが話し掛けた。
「はい、閣下。ハンベエ総司令官には仲間の仇を取ってもらった上に罪を見逃してもらった恩が有ります。」
ヒルネーは殊勝な顔付きで答えた。
「そのハンベエ殿が仲間のモルフィネスに逮捕されたらしい。」
「えっ?」
「俺はハンベエ殿を救い出して、我が軍の旗頭になってもらおうと考えるんだが、生憎奴さんとは口も聞いた事が無い。そこでヒルネーに橋渡し役になってもらいたいのだが、どうだ?」
キューテンモルガンはヒルネーにいきなり重大な胸の内を明かした。クラックには王女軍の内情を探るよう依頼しておいて、その舌の根も乾かぬ内にヒルネーには全く別の思案をぶつける。果たしてクラックの正体にまで気付いているのか不明であるが、喰えない一面を表に出した。
「ハンベエ総司令官を助けようという事ですか?」
降って湧いた話にたじろぎながらヒルネーがキューテンモルガンに念押しをする。
「そう言う事だ。」
キューテンモルガンは肯いた。
「ハンベエ総司令官には恩義が有りますから、そう言う話なら喜んで。」
自分が去った後にキューテンモルガンがヒルネーと次の企てに乗り出しているとは知らぬクラックは、馬を素っ飛ばして三日の後にはゲッソリナの王宮に到着し、門衛にモルフィネスへの取次を頼んだ。
隠密行動を取っている身故、味方にもあまり印象を残すのは面白くないはずだが、事重大と判断し、事情の把握を優先したものらしい。
モルフィネスから面会する旨の報せが来て、クラックはモルフィネスの執務室に向かった。
「ハンベエ逮捕の報を聞いて真偽を確かめに来たのか。」
モルフィネスはクラックを見るなり、先に問い質した。
「御明察の通りです。」
「ハンベエ逮捕は事実だ。奴は王女殿下の許可を待たずに独断で降伏している貴族を抹殺した。故に任を停止し、謹慎してもらっている。」
「謹慎してもらっている? 身柄を拘束しているのではないのですか?」
「ハンベエを拘束するのは物理的に無理だと判断されたので、逮捕の旨を伝え自分で謹慎してもらっている。」
「それで、ハンベエは大人しく参謀総長閣下の意向に従っているのですか?」
「ああ、今の所な。」
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