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「では、閣下とハンベエの間に諍いが生じたわけではないのですね。」
クラックは少し安心したように言った。
その言葉を聞いてモルフィネスは複雑な顔になり、数分無言になった後、
「貴公は私の腹心中の腹心であるから、本当の所を伝える。」
と苦い顔になった。
「・・・・・・。」
「元々ハンベエと私の関係は敵同士で、今はただゴロデリア王国の内乱を治めるという事情で協力しているに過ぎない。」
「・・・・・・。」
「それで、今回ハンベエが独りで貴族一統を討ち果たす挙に出る事を知っていた私は、この際貴族と共にハンベエも抹殺しようと策を廻らせた。が、策は破れてハンベエは死ななかった。私も流石にハンベエを抹殺するのは無理だと気付いたので本人に謹慎してもらっている。ハンベエの貴族抹殺の行為については王女殿下の裁定に任せる事にした。まあ、それが本来だからな。」
「ハンベエは貴族達を独断で処刑したのですか?」
「処刑というか・・・・・・貴族達の様子を見に行ったら諍いになり、殺し合いの結果・・・・・・ハンベエが貴族四十二名を皆殺しにしてしまった・・・・・・というのが『実情』だ。」
「なるほど。しかし、閣下の策がどのようなものだったかまではお尋ねしませんが、ハンベエにバレたら大事でしたね。」
「いや、実はハンベエには私が貴族との争いに乗じて抹殺しようとした事はハッキリ解っている。私も斬られるものと覚悟を決めたが、あの奇妙な男は私を斬らなかった。全く底の知れない男だ。」
「で、では、ハンベエは閣下に殺されようとしたのに大人しく閣下の指示に従って謹慎しているのですか?」
「そうなんだ。全く、妙な男と腐れ縁になったものだ。」
「私は閣下が王女軍に参軍してからのハンベエと閣下の関係から、お二人は互いに良き理解者となられているものとばかり思っていましたが、閣下はやはり未だにハンベエに敵意をお持ちなのでしょうか?」
「もっともな疑問だな。正直な所を言えば、もう大分前からハンベエへの敵意は消えている。それどころか、太子と戦う事になった王女殿下を支え続けたハンベエに好感すら持っている。」
「では、何故?」
「ハンベエの存在が巨大に成りすぎている。大義親を滅するという。ゴロデリア王国の将来にとって危険過ぎると判断してハンベエを除こうとした・・・・・・が、除けなかった。」
「ハンベエに謀叛の兆しでも?」
「それも全くない。」
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