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クラックがゲッソリナに向けて出立した後、ほとんど間を置かずキューテンモルガンもヒルネーを連れて後を追うようにゲッソリナに急行し、偶然にもクラックが王宮から走り去るタイミングで目立たぬように王宮近くまでやって来ていたのだった。
「では、私が王宮の兵にそれとなくハンベエ総司令官がどうなっているか探って来ます。」
同行したヒルネーがキューテンモルガンにそう言って、城門に向かった。ゲッソリナには二人切りでやって来ていた。
「ちょっと、お伺いしますが。」
とヒルネーは頭を下げて、門衛に声を掛けた。
「何だ。」
「あの、王女軍の総司令官のハンベエ様が逮捕されたと言うのは真(まこと)の事でしょうか?」
「真だが、総司令の知り合いか?」
「はい、前にハンベエ様に世話になった者です。一体、何で逮捕されたのでしょう。」
「知り合いなんだな。総司令に会われるかどうか聞いてみるから、名を申せ。」
「えっ・・・・・・お会い出来るのですか。投獄されているのでは。」
「そう言って、総司令の身を案じる者が後を絶たんで困っておる。もっともわしも事情が分かるまではその一人であったがな。」
「事情とは。」
「それはわしの口からは言えん。お主の名を聞いて総司令が会うと仰せられたら、王宮内に入れてやるから、名を申せ。」
「私はヒルネーと言います。」
意外過ぎる門衛の対応にヒルネーは半信半疑で名乗った。
「ヒルネーだな。待っていろ。」
そう言うと門衛は王宮内の別の兵士に声を掛けて、ハンベエに面会人が来ている旨を告げた。声を掛けられた兵士が伝達に向かい、
「じきに返事が来るだろう。」
と門衛はヒルネーの前に戻った。
待つほどもなく、伝令の兵士が戻って来て門衛にオーケーサインを出した。
「良かったな。総司令が会って下さるそうだ。其奴について行け。」
と門衛は伝令の兵を顎で指した。
ヒルネーは待たせてあるキューテンモルガンに先に知らせるべきか迷ったが、ハンベエの身も本当に心配だったので、そのまま伝令の兵士に従って王宮内に入って行った。
一方、王宮内ではハンベエが与えられている執務室で、小首を傾げてヒルネーを待っていた。
ヒルネーの名を聞いた時、ハンベエは思い出すのに五分ほど掛かった。
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