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(俺の前には顔を出すなと言って置いたのに・・・・・・。何の用だ。)
それでも会う気になったのは、『ハンベエ逮捕』の報に接して驚き心配する向きがあちこちからやって来るものだから、ハンベエ自身反響の大きさに驚き、自分の心配をする人間が妙な気を起こしてはと諭さざるを得ない心持ちになっていたからである。
「連れて参りました。」
先程の伝令の兵士がノックの後、ヒルネーを執務室に案内した。そして、去って行った。
不用心だなとヒルネーは思ったが、ハンベエの武勇を思い出し、『ああそうだった』と兵士の行動を理解した。
「しばらくだな。その後、息災だったか。」
とハンベエから声を掛けた。
「お陰様で。顔を出すなと言われて居りますし、出せた義理でもありませんが、ハンベエ総司令官が逮捕された聞き、流石に心配になり・・・・・・。」
「心配してくれて有難うよ。御覧の通り無事だ。形式的に逮捕となっているが、王女の裁定次第。俺は王女にとっては余り有る大殊勲者だ。大した処罰は無いよ。」
とハンベエはサラリと言った。
「そうなんですか。」
と相槌を打ちながら、ヒルネーはちょっと迷った。ハンベエの様子から、その身に危機が迫っているのでは無いらしいと解った今、キューテンモルガンがやって来ている事を明かすべきかどうか。
「実は私の他にも、ハンベエ総司令官の身を案じてゲッソリナにやって来ている方がおいでなのですが。」
ヒルネーは自分が見逃してもらった経験から、ハンベエは話せる人だったと思い出して言葉を続けた。
「誰だ。」
「キューテンモルガン閣下です。」
とヒルネーは小声になった。
ハンベエは一瞬ほおっという顔をしたが、
「『キチン亭』を知っているか。」
と直ぐにヒルネーに問い、
「知っていますが。」
とヒルネーが答えると、
「では、二人でそこで待っていてくれ。そこで会おう。そんなには待たせん。」
とさっさと決めてしまった。
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