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二 千人の果ても一人から
ゴロデリア王国の都ゲッソリナは人口20万。大陸の中でもかなり大きな都市であった。
ゲッソリナから西に通じる道はゲッソゴロロ街道と呼ばれていた。西にある都市、タゴロロームと通じる道であったからであるらしい。
そのゲッソゴロロ街道を少年ロキはつづらを背負って急ぎ足に歩いていた。
すっかり夕暮れてしまった。急がないと、追い剥ぎにでも出会ったら大変だ。明るい間は安全なゲッソゴロロ街道だが、日が暮れると危険な場所に変わってしまうのだ。追い剥ぎどころか、妖怪変化に出くわしたという人もいる。
ロキは半ば走り気味に道を急いだ。
しかしながら、悪い不安というものは大抵の場合、当たってしまうものだ。
突然現われたならず者に道を塞がれてしまった。
その一目瞭然のならず者はロキの前に立ちはだかり、短剣をチラつかせながら
「ここは通れないぜ。」
と、どっかで聞いたセリフを言った。
パッとロキは後ろに飛び下がって、
「金目の物は何も持ってないよ。」
と叫んだ。
「フンッ、それは、小僧、お前の身ぐるみ剥いでみれば分かる事だ。」
ならず者の男はロキを見据えて薄笑いをした。
ロキは身を翻すと、
「誰かあ、助けてぇ。」
と叫びながら全速力で駆け出した。
「ちっ、往生際の悪いガキだ。」
ならず者は舌打ちをしながら、ロキを追い掛けた。
全速力と言っても子供の足である。ならず者は余裕を持って、ロキの後ろを走る。駆けっこを楽しんでるつもりか。
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