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三 口なら天下無敵だよお
ゲッソリナに着いたロキはそのまま、王宮に向かった。ハンベエは宿屋を探すつもりだったのだが、ロキが一緒に来てくれよ、とうるさいので、仕方ないなあと付いていく事になった。
王宮の正面門には松明が焚(た)かれ、その明かりに照らされて門衛が閉めきられた扉の両側に槍を杖代わりに立っていた。何かの絵本に出てきそうな情景である。
ロキは物怖じする事無く、門衛に歩み寄り、
「タゴロロームのバンケルク将軍から王女様への手紙を言付(ことづ)かって来ました。王女様にお取り次願います。」
と言った。
右側の門衛がロキを見下ろしながら言った。
「バンケルク将軍だと!バンケルク将軍から手紙なら、お前のような小僧じゃなく、ちゃんとした使者の来るはずだ。デタラメを言って大人をからかうと牢屋に入れるぞ。」
門衛は怖い顔をしたが、ロキはへいっちゃらな顔で、
「やれやれ、やっぱり案じたとおりだ。いきなりやって来て、王女様に目通りしたいと言っても、門番に追っ払われるのが落ち・・・・・・と将軍に言ったら、これを見せろと言われたんだけど。」
と、懐から一枚の札を出して、門衛に渡した。札の真ん中には何かの紋章らしい印影が押されていた。
「これは・・・・・・」
受け取った門衛は札を見ていたが、左側の門衛に札を示して
「お前、分かるか」
と尋ねた。
左側の門衛は黙って首を横に振った。
「小僧。ちょっと待ってろ。」
札を受け取った門衛はそう言うと、門の脇にある潜り戸を開けて中に入って行った。
ロキは手を後ろに組んで門の前を右に左に行きつ戻りつしながら待っている。退屈に絶えられないタイプのようだ。ハンベエは少し離れて腕組みをしたまま、つっ立っていた。
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