1章

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「まあ、いいじゃないか。 話を聞くぐらい」 「嫌です」 「そうかそうか、話を聞く気になったか。 偉いぞ~」 「無視ですか?」 「私の、趣味は、嫌がらせ、です」 「なんで英語の訳みたいに区切ってるんですか?」 「では話をしようか?」 「会話が成り立ってませんけど?」 もう無茶苦茶だ。 この人は俺の話を聞く気がないどころか、相手にしてないようだ。 そして勝手に語り出す。 「まず服が学校なのに私服。 次に迷子の様子だった。卒業生が学校に来るという線も考えられるが、迷っている様子のお前が卒業生とは考えられない。 まず、18歳以上という感じにも見えないしな。 最後に転入生が来るという情報がある。 これが要因だ。 君は転入生だから制服を着ていないし、迷子になったんだろう?」 「……そうですね。 簡単に言うとそうです」 間違いではない。 転入の話は先生なら知っているはずだろうし、俺は制服をまだ持って無いから私服で来た。 学校から私服でいいと言われたからだ。 そして、広過ぎの校舎で下駄箱がわからない。 全て当たっている。 先生はさらに続ける。 「もし困っているなら私が昇降口まで連れて行ってやろうか?」 どうしようか? 確かに困っている。 だが、会話が成立しない先生に頼んで大丈夫だろうか? 厄介な事にはならないだろうか? 「ちなみに断ったら、お前は私の彼女ということで学校新聞に張り出してやろう。どうだ?」 「……げ、下駄箱まで、お願いします」 「ふふっ……よかろう。 付いてこい」 俺は疑いながらも、付いていくことにした。 いや、完全に脅しに屈しただけだが…… まぁそれでも一応は先生だ。 困っている生徒に嫌がらせはしないだろう。 そう思ったのが間違いだった……
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