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長い桜並木を抜けると、そこには開けた広場があって、威風堂々とした校舎が出迎えていた。
二人が真新しい制服の群れに同化して、ぞろぞろと玄関を進んで行くと、荷物を預け、すぐに小ホールで待機するよう受付担当の人から指示を受けた。
荷物を預けて小ホールに入ると、そこには新入生と思しき生徒たちが先生方の指示に従ってまばらに整列していた。
「クラス発表で確認したクラスごとに縦列しなさい」
「Aクラスは西側、Hクラスは東」
義一と恭輔はCクラスだったのを思い出し、それと思われる列に近づき、近くにいた男子生徒に話しかけた。
「きみ、Cクラスか」
「ん、そうだよ。君たちもかい」
どこか賢そうな雰囲気で、彼は振り返った。義一たちが頷くと、彼はもったいぶって右手を差し出した。
「宜しく。僕は久保田龍雪(クボタタツユキ)だ。ドラゴンの龍に冬に降る雪と書く」
「僕は和田義一。正義の義に、一つだ。カズと呼んでくれれば」
「俺は炉端恭輔だ。漢字は名簿でもみとけ。キョウスケでいいぞ」
「では僕はタツユキと呼んでくれ」
ひと通り握手し合うと、龍雪が初めに口火を切った。
「君たちはどこから来たんだ。もともと知り合いなようだが」
「ああ、北海道だよ。俺達ゃ幼馴染なのさ」
恭輔が暑苦しく肩を組んできたので義一はそれを無理やり引き剥がした。
「北海道。それはまた随分と遠くから……」
龍雪は目を見開いた。ここら当りの人は、大抵の人が北海道と聞くと驚くのは、二人共もはや慣れっこになっている。それはさらりと受け流して、義一は聞き返した。
「君はどこから」
「僕は地元だよ。しかしすごいな、雪がこんもり積もるんだろう。クマとかシカもそこらじゅうにいるそうじゃないか」
義一が苦笑いしたところで、先生方から注意を求める指示があり、龍雪は「あとでじっくり聞かせてくれよ」と二人をげんなりさせてから前を向いてしまった。義一が恭輔に向かって肩をすくめて見せると、彼は肩を震わせて声なく笑った。
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