春風にのせて

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他の生徒が自己紹介を始めると、自分に集まっていた視線がそちらへ向かう。 心配そうな目で文斗を見つめていた恭介も、今は他生徒の話を笑いながら聞いている。 文斗は本を広げ、右手でクルミ割り人形のリズムを刻みながらまた一人の世界に入ろうとした。 が、その異変に気づいてしまった 前に座っている女子生徒、大谷春海が一人、上半身を傾け、じっとこちらを見ていたのだ。 丸くて大きい目、小さい薄桃色の唇。 比較的整った顔立ちが、真剣な目をして文斗をとらえていた。
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