第一夜

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夢。 廻る廻る廻る廻る、廻る廻る、廻る廻る、廻る廻る廻る廻る廻る廻る、廻る夢。 暗黒、奈落、漆黒。 悪寒、不快。 重力的浮遊感。 酩酊。落下、堕落、墜落。不時着の気配無し。 無風。 闇。 不停止。 空気抵抗無し、凪の如き静けさ。 嘔吐、虚脱感。 時間感覚無し、刹那か、はたまた、久遠か。 景色無し、即ち、暗黒。 ただ自分だけがぼうっと光っている様。 加速度的感覚停止、認識錯綜。 服は着ているが、バサバサ翻る事は無く、ぴたりと身体に貼り付いている様、即ち、逆さまで宙吊りにされた挙げ句水中に突っ込まれしの如く。 無感覚、下に、下に、下に。 不意に視線。反転、視界。 不安定視線の先、廻る廻る廻る廻る、廻る、廻る廻る廻る廻る、廻る、廻る、廻る女。 同じように回転落下。話す事もままならず。 女、俺と同じく儚く発光。認識可能。 女に見覚え無し。 深い、不快、不介入。ただひたすら回転。女と俺の落下速度は変わらず、ひたすら並行。 音、無し。大人し。 女、助け求めるでも無し。廻る視界に俺を入れる度、ひたすらに俺を見るばかり。かたや、俺はというと、女に助けを求めるにも声出ず。 無風、即ち、真空。音、振動せず。 加速。 加速。 加速。 加速、恐怖。 無抵抗。 永久的落下、無言の女の視線。漆黒。虚ろ。伽藍洞。 視線。 視線。 視線、連続的駒送りの悠久。 視線。 視線、無。 視線。 視線。 視線、狂気。 無感覚、触覚器官に寒気。ぞわり、肌がひやりと逆立つ。 然して、冷たさは感じず。それは脳髄に直接氷をぶち当てた様。 ……ああ、夢なら醒めてくれ、とも思わず。否、思えず。 無に身体が、思考が浸食されていく。 そして、俺は無間地獄に堕ちてまだ百年しか経っていないのだと、唐突に気付いた。
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