『最期』

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『サヨナラ……。 真希……。 今までありがとう』 「え……?」 誰かに何か言われたような気がして、あたしは辺りをキョロキョロと見渡した。 「真希、どうしたの?」 あたしの不自然な動きに親友の松井 菜緒(まつい なお)が大きな目をパチパチさせながら心配する。 「今誰かあたしに『サヨナラ』って……」 あたしは菜緒に説明する。 「気のせいじゃない?」 キョロキョロと辺りを確認し菜緒は言う。 「……そうね」 菜緒には聞こえなかったのかなぁ。 あたしは短い髪の毛をかきあげ首を傾げた。 『真希……』 低い声がまたあたしを呼ぶ。 「誰? さっきから五月蝿いわね」 思わずあたしは勢いよく立ち上がった。 どかっ! 立ち上がった瞬間誰かに思いっきりエルボーをかましてしまった。 「痛いなぁ、真希」 脇腹を押さえ、見慣れない赤い髪の長身の男があたしを見る。 「キャッ! イケメン! 真希の彼氏?」 赤い髪で切れ長の目、しかも長身の彼に菜緒はテンションが上がる。 ウエーブのかかった髪を揺らしながら菜緒は男をジロジロ見る。 「いや、違うし。 まず、不自然にうちのクラスに紛れ込んでるの気にしようよ」 そんな菜緒にあたしは冷静につっこむ。
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