『最期』

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柏木先生の言葉を合図にみんなばらばらと席に着いた。 「傘井 みずき(かさい みずき)。 ですよろしく」 ビンゴ。 やっぱりそうだったのね。 通りで見ない顔だと思ったわ。 「真希にウィンクしてるしやっぱ知り合い?」 隣の席の菜緒があたしに話し掛けてくる。 「ん~……」 あたしは頭を抱え悩む。 どう考えても記憶ないのよね。 参ったなぁ。 「俺の事覚えてない?」 明らかにあたしに話し掛けてる……よね? 「俺野君?」 名前が思い出せないあたしは咄嗟に適当に名前を言う。 「いや、違うし」 そして冷静につっこまれる。 「黒板、黒板」 菜緒が黒板を指差す。 黒板にはでかでかと『傘井 みずき』とかいてある。 「あぁ、傘井君って言うのか。 やっぱり心当たりないな」 やっぱりどう脳内を活性化させ検索しても、『傘井 みずき』は出てこない。 「まぁ、いいや。 改めてよろしくね」 切り替えの早い傘井君はニッコリと笑った。 「あー。 雑談は後にしてくれないか? 取り合えず空いてる席に座ってくれ」 あたし達の雑談を黙って聞いていた柏田先生は切りがいいとこで傘井君に声を掛けた。 「はーい」 良い子な返事をして傘井君は明らかに『傘井君用』に作られていた席へ向かった。 いつ誰が用意したのかは謎である。
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