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は?
思わず声に出しそうだったのを必死に抑え、俺はうつむいている井端から目を放せないでいた。
「あ、その……あなたは?」
俯いたままで俺に尋ねた。
「あ……」
俺は必死に声を出そうとしたが、蝉の声にすら負けるほど小さかった。
当然女の子のもとにも俺の声は届いていないはず。
自分でそう思った。
しかし女の子の口からはさっき俺が言ったことが復唱された。
「松平 圭祐(まつひらけいすけ)くんか……よろしくね」
……。
どうやら井端は俺のことを覚えいないらしい。
まぁさすがに井端と話したのなんて数回しかないし覚えてなくても不思議ではない。
俺は何を期待していたんだ……。
俺は自分で自分を殴りたくなった。
心の中は複雑にしかし冷静に自分の愚かさに悪態をついていた。
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