序章・産声

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「うわぁぁぁぁぁ」  一人の男の子が泣いた。雨が降りながら遠くでは夕焼けが見える夕立。体は雨で濡れたのか涙で濡れたのかわからない程までに涙を流した。  同時刻、遠く離れた地で。 「雪菜お嬢様。大変です」 「どうしたのですか?」  まだ、若いのに和服を着こなし。どこか落ち着いた気品の姿である女の子が座っていた。  一瞬、その姿をみて使用人である彼女は雪菜に一瞬目を奪われた。だが、すぐに我を取り戻した。 「宝物庫に異常が」 「わかりました。すぐに行きましょう」  すぐに立ち上がり宝物庫にてかけつける。 (お嬢様は変わった)  彼女はここにつかえて五年になる。その彼女からみて雪菜は両親が死んで一年で劇的に変わった。  前までの彼女はどちらかといえば、活発的な方で多少甘えん坊だった。それが、両親が死んでから当主になると。落ち着いて、誰にも頼る事はなくなった。 (だいぶ、無理をなされてる)  五年も一緒にいれば自分の妹くらいの子に情は移る。彼女はこの子が心配でたまらなかった。 (せめて、支える人がいてくれれば)  心からそう思う。 「この宝物庫は・・・」  水無瀬家にいくつもある宝物庫。しかし、その中でもこの中にあるものは別格だ。数百年と
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