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「じゃあ、僕は明日にむけて休むから帰るよ」
「1Rで沈めてこいよ」
幸信が言うと定良は当然とばかりに腕をあげた。
「さて、続きするか」
幸信は箒をてにもった。
終わった頃は辺りが夕焼けになった頃だった。
(ようやく、終わった)
幸信は箒を片付けと一息ついた。そして、辺りを見回した時。一人の女性がいる事に気付き。目を奪われた。 この神社の唯一誇れるものは桜である。ただの桜ではない。百年以上枯れる事なく威風堂々と雄大に立っている。そして、満開時の特に夕焼けの時は誰もが息を飲ませる程綺麗だ。
しかし、その桜でさえ引き立て役に見える程。その少女は別格だった。
セミロングの髪に夕日が反射して、少し赤く見える。年齢は幸信と同じくらいで、懐かしそうに桜によりそう姿は正に幻想的とさえ、幸信はがらにもなく思った。
数分という長い時間、ただ立ち尽くすしかなかった。
彼女はゆっくり幸信の方へ振り向いた。そして、ゆっくり微笑む。幸信はそれだけで心臓が高鳴った。
彼女がゆっくり幸信の方へ歩き始めた。
「お久しぶりです。幸信さん」
彼女は幸信に声をかけた。
(誰だ)
幸信には誰かわからなかった。
「わすれちゃったんですか仕方ないですねぇ」
彼女はクスクス笑いながら歩み寄ってくる。その表情をみてさらに心臓が高鳴った。
(なんだ、この高鳴りかたは?)
幸信はその高鳴り方に疑問を感じた。これは、緊張だけではなかった。
彼女が腕を幸信の肩にまわそうとする。その時に気付いた。
(これは危険反応だ)
気付いたら行動は早い。慌てて後ろに飛び退く。
「残念。もう少しだったんですけどねぇ」
彼女は手の内に隠していた毒針を見せた。
「お前は清美か?」
北野清美は嬉しそうにうなづいた。
「本当に忘れられていたらどうしようかと思いました。まぁ、忘れてたら一週間寝込んでもらいましたけど」
清美は本当に安心したように息をついた。
「相変わらずだな。いきなり毒針を刺そうとするなんて」
「私だって乙女ですから感動の再会ぐらい何もせずにすましたかったですよ。ただ、その感動の再会をだいなしにされたショックで怒りやら悲しみやらが沸々と」
(あっ、だいぶご立腹だ)
一見笑顔に見えるが幸信には違和感があった。
「八年。お互いわからなくなるくらいにかわるだろう」
「私はすぐにわかりましたよ」
「そりゃ、ここは俺の家だからな」
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