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有働清一(ウドウセイイチ)には娘がいた。
妻はいなかった。
病弱だった彼女はもういなかった。
病弱であるとわかっていながら妻にした女はもういなかった。
危険だとわかっていながら産んだ子供と引き換えに
有働の短い甘い幸福な結婚生活は終わりを告げた。
それでも男は幸福だった。
愛するものがいなくなっても
代わりに愛する者がいたから
愛しい娘が生きていたから
体の強さまで母親とそっくりな娘でも
父親にとってはそれだけで生きている価値があったから
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