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「あれ、本当にご先祖の作品!?」
「それは…間違いないだろう。足を見てみろ」
覗いていた双眼鏡を弟たちにまわしてやる。
ゴーレムの左足首に掘られた刻印は、神秘の技術をあらわしているという『丸に流星と釘』
間違いなく我が家の家紋だ。
あれから一夜明けて翌日。
明け方俺たちが港町に到着した時も、朝靄の中でゴーレムは変わることなく町を徘徊していた。
ゴーレムの歩みは一定のリズムで地響きを起こし、地面を伝わってくる。
高さは2階建て民家ほどで、足の太さは俺たち3人手をつないで抱えるほどもあった。
監視人がいいつけをちゃんと伝えたらしく、表に人の姿は無い。
しっかりと閉ざされた扉の隙間から、息を殺して表を見守っている張り詰めた気配だけが、空気を満たしていた。
ゴーレムが通り過ぎるのを見計らったように、町の入り口に一番近い家の扉が細く開き、昨日の監視人がこちらに手招きをしていた。
「来てくださって、本当にありがとうございますっ。……どうかなさいましたか?」
「…いや、ちょっと予想外な姿だったもので……」
「港町では有名なギョギョスという漁師の守り神のお姿です。親しみやすいでしょう。」
スケッチブックには、中の駆動系統の仕掛けのみ表記してあり、たいてい外見までは書かれていない。
目の前を、地響きをたてて通過する像の形状を『親しみやすい』という一言でくくってしまってよいものだろうか。
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