Ⅴ.乖離

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『……いかがなさったか。一体何に動揺しているのだ』 『――っ、動揺など……!』 「エランさん! こんなの間違っている! あなたもそう思っているはずだ!」 セトラスが訴え掛ける、その横で、 「……」 結衣は、静かに涙を零していた。 「ゆ、結衣……」 「……」 その両眼からとめどなく流れ、頬を細い筋を成して伝い落ちていく、その泪は、どんな意味を含んでいただろう。 母と十二年越しに再会した嬉しさか。 母が敵となっていたことへの憤りか。 母と対峙することになった悲しさか。 その全て、あるいは、それ以上の意味があったのかもしれない。 「エランさん!」 セトラスが、再三呼びかける。 ついにそれに奴が反応した、その瞬間、 『……私は“エラン”ではない!』 右手を前にかざしたその反動で、被っていた黒いフードが落ちる。
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