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それは、いずれ殺す、と言われているようなものだった。父に似て蛮勇なあの子が、自分たちが消息不明になったと聞いて、動こうとしないわけがない。もし周りに制止されても、いずれクロアたちと交戦するのは、目に見えている。
「……」
しかし、すぐに殺されるよりかは、幾分もましと言えた。
虚空間の主、この零よりも強く、たくましく育ってくれることを祈り、エランは告げた。
「――わかりました」
その瞬間、その言葉を待ち構えていたかのように、零の右手が彼女の胸部にかざされる。
そして、掌と胸部に、黒い煙のようなものの筋と、淡い水色の光芒とが行き交った。
「あああああ――っ!!」
エランの絶叫が轟く。
身体の内奥から、壊死していくような感覚に襲われる。
神族の核たる力が、“死”の概念に塗り潰されていく。
それは、今までの自分の存在というものを全否定されているような、自我が消えていく恐ろしい永遠のごとき瞬間だった。
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