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『……』
やがて、全ての神力が、死力に置換された。
『……私は――』
感情が消失したような暗い声が、彼女の口から発せられる。
青かった双眸は、鮮やかな赤に変色していた。辺りの暗闇に、それだけが異様に浮く。
『俺の忠実な眷属だ。名は……』
零はそこで口ごもった。神族という身分を剥ぎ取った今、前の名で呼ぶことは、彼にとっては憚られるものだったのだ。
『……お前は既に、エラン(eram)ではない』
それを静かに聴くエランだった存在に、
『――お前の名は、メア(mare)だ』
対の、新しい名前が与えられる。
『主――』
零に対して片膝をつき、深々と頭を下に向けるその姿に、白装束はあまりにも不釣り合いだった。
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