0.行方

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零は、その前髪に留めてあった青いヘアピンを取る。 『……かつての色は棄てろ』 ヘアピンを、背後に投げる。 するとそれは、何かに突き動かされるようにして、虚空間の出口へと飛んだ。 それに零は気付いていない。 『……その装束も、俺は嫌いだ。新調しよう』 零にとって、清冽な色である“淡色”は、最も忌み嫌う色の一つだった。己の纏うマントのようなものが、漆黒に埋め尽くされているのもそのせいだ。 今や、エラン、否、メアに、拒否の意志は現れない。 彼女は既に、自我を確立したが、それは、“死”の概念上のものであり、以前のものではない。 それでも―― 『……行くぞ』 『はい』 ――零でさえも、拭いきれないものは、あった。 それは、彼女の心底にあり、決して忘れないほどの、強力な記憶。
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