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「い、いっちゃった……」
年齢にして三歳であるセトラスに、五歳の結衣は負け放しだった。やたら速いのである。それゆえ、七歳のルシウスともなかなか良い勝負をする。
「……」
走って疲れた結衣は、草原の上に寝転んだ。
耳に、草の靡く爽やかな音が響く。
「……いいかぜ」
にっこりと笑みを浮かべ、青空をぼんやりと見つめて、やがて眼を瞑った。
「……?」
すると、何かがぽとりと落ちる音がした、と彼女は感じた。
上半身を起こし、辺りを見回す。
遠くからは、セトラスとルシウスのはしゃぎ声が聞こえてきていた。
まもなくして、何かがあるのを発見し、立ち上がってそこに近づく。
「……これ」
落ちていた棒状のものを拾い上げると、それをしげしげと見て、呟いた。
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