0.行方

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「──ママのだ」 その小さな手には、一つの青いヘアピンがあった。 彼女もよく知っている、エランのお気に入りのもの。 「……?」 結衣はただ、疑問に思いながら、青空を見上げた。 そこに、雲は一つとしてない。 流れる風が、彼女の頬に吹きつける。 「……ママ、かえってきたのかな?」 ようやく結論を見つけ出し、うきうきとした表情で、居住している中央部へと走り出した。 今ならセトにも負けないのに── と彼女は考えたが、すぐにただただ足を速く動かすことだけに思考を向ける。 その時、握りしめたヘアピンの重さを、彼女は意識していなかった。
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