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『――三周?』
『はい。主はそのように訂正するようご命令をなさいました。これは我の意志ではない、伝達です』
外はまだ暗い。その洞穴の中の半ば付近で、藍色のローブを身にまとった道化師とフォカロルが対峙していた。
対峙、というが、後者の姿は誰にも見えないものだった。
『それはもちろん可能だが……、意図が見えない』
道化師は唸りながら顎を触る。
『主の“ゲーム”には、常にある程度の均衡が必要となります。恐らくその関係での判断したと思われますが……』
フォカロルのそれも、あくまで推論の域を脱しなかった。彼にも、今回の命令の主旨を詳しくは聞かされていない。
『……しかし』
道化師の濁った水色の前髪が、ローブに付属しているフードからちらりと見える。
『三周にするとなると、計百八十時間。だいたい一週間の猶予を与えることになってしまう』
『一週間あっても、ここを探し出すのは難しいでしょう。……』
フォカロルが妙に口を噤んだのは、既に零が、時を見計らって神族たちにヒントを与えよ、という内容のことを言っているからだった。
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