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暗い世界の中に、彼らはいた。
コツコツと、靴音が鳴り響く。徐々に周囲は、群青から藍に変わっていっていた。
「……エラン、大丈夫?」
「はい……」
やや長髪の黒髪の勇猛そうな男性が訊き、後ろに続く、青の瞳と亜麻色の髪をした、清純そうな女性がそれに答えた。
女性の前髪の横側には、晴れた日の海のように青いヘアピンが、二本留められていた。
「……おい、雄志。やっぱり予定通りのルートを無視したらダメじゃないか?」
辺りの異様な暗さに、怖じ気づいた仲間の一人が言った。
正規ルートからは、歩けば歩くほど着実に光が失われていっていた。
「案ずるな。少し向かって座標を記録するだけだ」
やや髭を生やしている彼は、強気な口調で返す。
偵察制度によって虚空間に出向いた彼ら――総勢六人の神族たちは、本来は入ることができないはずの虚空間の深部に、偶然侵入することができていた。
できてしまっていた。
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