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『……碧眼の神族の生命活動を維持させろということか』
死力を持つ者に、水分、栄養摂取は必要ない。そうするとこれは、一週間もの拘束の間に、ゲームの贄である彼女が餓死しないようにするためのものに他ならなかった。
『正直そんなことをしなければいけないのは気が進まないが……』
しかし、それは主である零の命でもあった。
逆らうことは、許されない。そんなことは当たり前であるから、道化師は割り切って新たな思考を巡らした。
『……摂食は何回するのが適切なのだろうか』
彼は、神族や人間たちのしている食事という行為を具体的に知らない。フォカロルの残した文面だけでは、適宜としか書かれていなかったので、判断がつかなかったが、
『……まあ、一日一回で十分だろう。手間なことをわざわざする必要もあるまい』
そう結論づけ、缶を懐にしまう。
そして彼はまた、洞穴の中にある岩に腰を下ろし、その時を待った。
徐々に穴の外の空は薄明るくなってきていて、満天の星空が消え始めている。
内奥にいるセイラは、その光を知らない。
“孤独”。それがまさに、今セイラが感じていることだった。
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