Ⅴ.乖離

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「タイガくん、治療を早く!」 「……っ」 ヘーニルさんがいつの間にか移動していて、俺の前に立ち、守るようにして背を向ける。 続いて結衣も走り近寄り、俺の隣に座り込む。 「待ってて、今治すから!」 次の瞬間、 ―― 俺と結衣のみを取り囲むように、淡い緑色の膜が形成された。 見ると、ヘーニルさんが膜の表面に手をかざしている。 「タイガくん、まずは患部を一刻も早く治してくれ。僕はあちらの増援に向かう。結衣ちゃんも、頼んだよ」 「は、はい!」 結衣が返事をするや否や、彼は、向こう側の黄色と白、山吹色の雷撃が飛び交っている戦場へと出向いた。 「まずは左足首ね」 「……ああ」 輪郭が出来上がってきている左足首に、結衣は二重にヒーリングをしてきた。 ―――― みるみるうちに元通りになっていく足先に、俺は驚愕した。 「……結衣、すごいな」 「甘く見ないでよね。水系統は元来治癒力の効果が群を抜いて高いのよ」 そう得意げに語る間に、左足首は、ちぎれたことが嘘のように、完全に再生された。その濃いセルリアンブルーの光をそのままスライドさせ、右足首の修復に取り掛かる。
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