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五月十二日、朝。
空は、すっきり快晴とまではいかずとも、概ね晴れだと言えた。
近隣の家に生えた立派な桜は、既に完全に葉桜と化している。歩く俺たちを、燕がすいーっと追い抜かしていく。もうそんな季節だったかな。
背中には、約一週間ぶりのランドセル。そう、俺たちは日本に戻ってきていた。
朗らかな笑みを浮かべて、登校中に咲季が大声で言葉を繰り出す。
「はい、じゃあ今日の給食は、なんでしょー?」
「……知るか」
一週間近く経っても、彼女の元気さは相変わらずのものだった。ってかまた給食の話かよ。
「クイズなんだから、“しらない”はなしだよ?」
これクイズだったのか。
「……廉、パス」
たまらず隣の友人に預ける。一瞬苦笑に近いような表情を浮かべたが、しっかりと引き取ってくれるのが彼の良いところである。
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