1070人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここまでだ。おとなしくセイラを解放しろ」
その隣に、オーディンさん、ヘーニルさんが並び、やはり各々の武器を構えた。奥でセイラは、心配そうな顔を浮かべている。
『……どうしてこうも人間は短絡的に考えるのか、甚だ疑問だ』
その発言が終わると同時に、俺の左手首も再生が完了した。結衣に一言、「ありがとう」と言ってから立ち上がり、二人で防護陣の外に出る。
『ここまで来たのだ、最後まで見てくといい』
「……ふざけるな。貴様の遊戯に付き合っている暇はない」
オーディンさんが、威嚇するような口調で反論する。その間に、ようやく俺は、ティルヴィングを両手で持ち、前に向けた。
しかし相手は怯むことなく、むしろ嘲りを含めて、
『……やれやれ。ギャラリーにはマナーを守ってほしいものだ』
そう道化師が言い放った、その刹那、
――――
「っ!?」
そいつの横に、黒い噴煙が渦を巻いて現れ、
「なっ……!」
その中に、一人の人物が佇んでいた。
黒い装束、暗めの茶髪の直毛のセミロングヘア。被られた黒いフードから垣間見えるその瞳は赤い。
最初のコメントを投稿しよう!