Ⅴ.乖離

28/60
前へ
/522ページ
次へ
「……!」 その姿は、確かに見覚えがあった。 瞳の色とヘアピンがないことを除けば、いつか、結衣の部屋で見かけた、写真の中の女性と、全く変わらない。 『――虚空間の(しもべ)、“メア”です!』 その刹那、 ―― 前に出し、かざしていた右手のひらから、灰色の光芒が走る。 それは、その場にいる神族へと均等に行き渡った。 「なにを……、……っ!」 セトラスが歯向かおうとするも、 「――体が動かない……!」 その発言で、今まさに自分達に、何の呪文がかけられたのかを理解する。 「……君がレストレインをしていたのか! あの日も!」 オーディンさんはそう言いながら、右手に白い光を宿す。 「(……あれ、動ける?)」 ここで、なぜか自分は動けることに気がついた。しかし、まだ一歩も動いていない。 これはチャンスかもしれない――。 そう判断し、前方の状況を、確認する。
/522ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1070人が本棚に入れています
本棚に追加