1070人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
“メア”の横に道化師。その後方二十メートルほど先に、セイラが架されている。
「(なんとかメアの気を引いてくれる人がいたら……)」
見たところ、セトラスとヘーニルさんは必死に抗おうとしているが、動けるような感じでは全くない。一方、オーディンさんは、手のひらの白い光を自分の胸部にあてている。恐らくこの中では彼だけが、このレストレインからいち早く抜け出すことができるのだろう。結衣は、
「……」
動けるのか動けないのか、特に抵抗をする素振りもなく突っ立っている。……いや、仮に動けたとしても、この現実を前に俊敏に動くのは無理だ。
『もうまもなく作品は真の完成を遂げる。そこでしかと見届けるがいい』
道化師が言う。こいつはオーディンさんが動き出すことを知らない。そしてメアは、
『……』
やはりオーディンさんの方に赤い瞳を向けている。知っているんだ。レストレインが通用しない相手だってことを。
「(オーディンさんが動き出すその瞬間、レイズを用いれば……)」
道化師の真横を通り抜けて、セイラの元に到達できるかもしれない!
しかし、チャンスは一度きり。
失敗は、許されない――。
最初のコメントを投稿しよう!