Ⅴ.乖離

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「……エラン!! どうしてそのような姿に成り果ててしまった!」 光玉を自身の身体にあてながら、オーディンさんは叫ぶ。 『過程などどうでもいいのです。今ここにある結果こそが全て……!』 「……そんな理屈で納得できるものか!」 慎重にその様子を窺う。恐らくオーディンさんもレイズを用いて攻撃を仕掛けるだろう。見逃せはしない。 「……っ」 情けないことに、自分の指先の細かな震えが止まらない。失敗できない、しかもこれは己が独断専行ですることなのだ、という重圧に、今にも押しつぶされそうなんだ。 大丈夫、ティルヴィングは右手にあるんだ。万が一攻撃されても、反撃、少なくとも防御はできる――。 「エランさん! ユウシさんはどうなったんだ!」 『――……』 メアは何かを言いたそうだったが、すぐに口を噤んだ。そして、 『……どうでも、いいことです』 苦々しく、そう呟いた。そう俺は感じ取れた。 ユウシさん……、多分結衣のお父さんなのだろう。どうでもよくなんかないはずだ。あるいは、もうどうしようもないのか。
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