0.行方

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この偵察隊の長を務める神族、(にのまえ) 雄志(ゆうし)は、これを良くも悪くも契機と踏んで、仲間と共に、まだ知らぬ虚空間の深部へと足を進めたのだった。 しかし、彼の妻――エランは、あまり歩を刻むのに賛成ではなかった。 「……ユウ、やはり戻った方が良いのではないですか?」 「エラン、弱気は損気だぞ。未知の世界に踏み入れていることに、感動するべきだ!」 それを言うなら、短気は損気だ、とエランは思った。しかし、こういう時の雄志には、何を言っても聞かないことを、彼女は知っていた。 勇敢、と言うよりは蛮勇で、無茶が好きで、それを楽しむ男だった。昔から全く変わっていない。 「(……まったく、仕方のない人)」 彼女は、笑みを浮かべていた。 苦笑ではない、微笑を。 「……よし、座標記録だ」 先頭を歩く雄志が止まり、振り向きざまに仲間に指示をした。 隊員はそれぞれ、各々の持つ機器などで指示された内容を果たそうとする。 その刹那――
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