0.行方

9/17
前へ
/522ページ
次へ
『……貴様たちは見たところ、常界の神族のようだが、何をしにきた』 それに反発したのは、 「何をって……、あなたたちが先に被害を及ぼしているのに、よくもそんな口が利けたものですね……!」 「……エラン」 意外にも彼女だったのだが、雄志はそれを諭し、制した。 『……確かに、愚問だったな。大方、我々の偵察、といったところか』 「……」 雄志はすでに、己の意識を保持するのに精一杯で、図星を突かれたことに対して反応をしてしまう余裕もなかった。 『……まあ、何でもいい。あいにくだが、偵察を寛容するほど俺は甘くはない。スルト』 一言呼ばれ、スルトは倒れている彼の首根っこを粗雑に掴むと、ひょい、と持ち上げて、 『来い。地獄を見せてやる』 そのまま、朦朧とした意識の雄志と共に、闇へと消えていった。 「ユウ――っ!!」 『諦めろ。ここに来た時点でお前たちは助からない』 エランの叫びを、零は冷たくあしらった。
/522ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1070人が本棚に入れています
本棚に追加