Resounds the requiem

3/11
前へ
/12ページ
次へ
 人間の生活に慣れ親しんだ君には、聞きなれない単語ばかりだろうか。だが仕方のないことだ、全て真実なのだから。現に、私は魔法使いだ。ただし、普通の魔法使いではない。私は人々から“大魔道士”と呼ばれる存在だ。魔法というものはその性質や難易度で分類される。下から自然魔法、上位魔法、最高が大魔道魔法となる。その大魔道魔法を使える者が、魔法使いの中でも大魔道士という階級に分類される。  大魔道士は百年に一人現れるかどうかで、並外れた魔法使いとして人々から崇められる。ただ、気を付けて欲しい。現在、大魔道士は私を含めて三人もいる。一人はマルコフ・ヒルデブラント。もう一人はヴェルファング・アージェック──私の兄だ。  彼らはきっと君に近づいてくる。いや、既に君は彼らの監視下に入っている。だから、万が一彼らと出会った時は用心してほしい。この世にいない私はもう君を助けることができないのだから。  不思議な気分だ。君がこの手紙を読むとき、私は……そうだな。もし君が突然魔法が使えるようになった時のために、魔力の仕組みについて説明しておこう。魔力はサウンズの体内に蓄積される目には見えないものだ。何か音楽を聴いて自身の心が動かされれば、その感動によって体内に魔力が溜まっていく。そして、その魔力を消費することで魔法を放つ。そして魔力が無くなればまた音楽を聴く──この繰り返しだ。  また、魔法を使わなくても魔力は自然治癒能力としてはたらくために、少しずつ無くなっていくのには気を付けて欲しい。つまり、自己の健康維持の為に魔力は少しずつ消費されていくのだ。  ちなみに、“AMMS(アムズ)”という病気がある。これは、魔力が作り出せなくなる──音楽を聴いても全く心が動かされない状態を指す。サウンズは治療を魔力に頼ってきたため、アーソイドでは病院に行っても人間の世界ほど有効な治療は期待できないから気を付けるんだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加