23人が本棚に入れています
本棚に追加
【いつものことだけど、ちょっと恥ずかしいのよねww】
動揺が表に出ないように気を付けながら、
綾子はできるだけさわやかに答えた。
「来週の木曜日からなんだけどさ、予定入っているかな?」
「木曜日ですか?何時ごろですか?」
「いや、その、申し訳ないんだけど、アシスタントとして出張に付いてきてくれないかな?」
「出張ですか?」
「うん、客先にプレゼンしに行くんだけど、俺パソコン全く駄目だからさ。操作を浅田君にお願いしていたんだけど…」
それを聞いて納得した。
浅田は浩一の部下だが、
昨日から急性胃炎で入院してしまった。
「浩一さん、こき使いすぎですよww」
「いや、そんなつもりじゃなかったんだけどさwww、でも急に都合つく奴がいなくて…」
「私ならどうせ暇だろうってことですか?ww」
浩一と二人での出張に心躍る綾子であったが、
少し浩一を困らせてやろうと、
冗談っぽく聞き返した。
「その通りww。ってのは冗談だけどね、お願いできないかな?金曜日の朝一番でアポ取っているから、前日入りしてそのまま接待まで行くから帰りは土曜日になっちゃうけど…」
「私は大丈夫ですよ。どこに行くんですか?」
「○菱電機の京都本社だよ。旦那さんには申し訳ないんだけど…」
「いいんですよあんな奴!何なら土曜日は京都観光して日曜日に帰ってきてもいいくらいです!」
「なんだよ、また喧嘩したのかww?」
「そうなんですよ、聞いてくださいよ!この前なんか…」
いつものとおり夫の愚痴をこぼしているが、
内心では妄想が膨らんでいく。
【お互い既婚者だし、間違いは起こらないよね…。でも期待しちゃうww】
いつの間にか綾子の下着はシミが広がっている。
【やだww、私どんだけ欲求不満なのよwww】
「ということだからよろしくね。」
「はい!楽しみにしてますww。」
「遊びに行くんじゃないんだからww」
その日から綾子は出張を指折り楽しみにしていた。
すでに夫には京都に出張で『日曜日』に帰ってくると伝えていた。
出張までに終わらせなければならない仕事は全て片付けた。
上司命令での出張ではあるが、
自分の仕事を中途半端に投げ出すことはしたくなかった。
ただ仕事を早く片付ければ片付けるほど、
出張が近づいてくるような気がして、
集中力が増しながらもストレスは感じなかった。
そしてようやく当日を迎える。
「じゃあ行ってきます。帰りは日曜日になるから。」
最初のコメントを投稿しよう!