Prologue

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「今日は楽しかったね」 「そうだね」 俺、咲良 寛人(サクラ ヒロト)は彼女である霧島 美帆(キリシマ ミホ)とホテルから出てクリスマスの夜の街を歩いていた。 美帆は腕を組み、ニコニコとしている。 俺も笑顔を向けて街を歩き、近くの公園で止まる。 「寛人?」 「あ、あのさ……」 「?」 俺は不思議がっている美帆に向けて、ポケットから小さな箱を取り出す。 それは美帆がずっと欲しいと言っていた指輪だ。 「メリークリスマス、美帆」 「寛人……これって……」 「ずっと欲しがってただろ? だから、これ……プレゼント」 「でも……これ、高かったでしょ?」 そう、かなり高かった。 バイト代を全部つぎ込んでやっとのことで買ったのだ。 けれど美帆の笑顔が見たかったから、頑張った。 「そんなことないよ、全然大丈夫」 「ありがとう!! 大事にするから!!」 美帆は目に涙を浮かべながら、笑顔を向けてくれる。 そんな美帆を見て俺は微笑みながら指輪を左手の薬指に付けてやる。 白い肌の彼女に、その指輪は十分すぎるほど似合っていた。 「きれい……」 美帆はうっとりと指輪を見て言う。 「似合っているよ……」 俺が言うと、美帆はまた嬉しそうに微笑んでいた。 それから俺たちは公園のど真ん中でキスをしてしまう。 情熱的なディープキス。 長い時間、それを続けて俺たちは離れると、美帆は名残惜しそうにしていた。
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