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 私は妻リディアと幼い息子を連れて、ロブロスの中心街まで列車に揺られて向かっていた。 よくきしむ古い木製の列車だった。 一昨日からの雨は今朝になってようやく上がったが、車窓から見上げた空はまだ灰色だった。 息子は久々の列車ではしゃいでいたが、私と妻は言葉が少なかった。  やがて列車がロブロスの駅に滑り込み、大きい耳障りな金属音をしばらくたててようやく止まった。 駅の屋根の下は、雨のせいか随分暗く感じた。 私たちは雑踏にもまれながらホームに降りた。  駅を出ると、四月も終わりだが随分肌寒かった。 駅前は若者でごった返していた。 私たちはまだ乾かない石畳の街路を、人混みを縫って歩いて画廊に向かった。 駅からしばらく離れるともう少し人々の年齢層が高くなり、数も幾分減って歩きやすくなった。  やがて画廊に到着した。 表通りに面したそれなりに立派な画廊だった。 画廊は灰色の石造りで、歴史を感じさせる近代建築だった。 表には白い大きめの立て看板があって、黒の大きな機械印刷の字で「ゴルドー展」と書いてあった。 看板は少し濡れていた。 私たちは入り口のところで金を払い、入った。  今回の展覧会の絵は合わせて七〇枚ぐらいあっただろうか。 半分ぐらいは見たことがあったが、半分ぐらいは知らなかった。  画廊をしばらく歩いているうちに、私はふと足を止めた。 そこには五枚、女性を描いた絵が並んでいた
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