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私と天城くんは無言で道のりを歩く。
天城くんの家から私の家までは近いはずなのに遠く感じた。
「あ、ここだから。」
玄関の前に着くと私は口を開く。
天城くんはまだ俯いたまま。
「えっと……今日はありがとう。なんかごめんね。また明日ね。」
私はそう言って天城くんに背中を向けると腕を捕まれた。
「………れ。」
「え?」
天城くんが小さな声で呟く。
「………もう、俺に関わらないでくれ。」
天城くんはそう言うと来た道を走って帰っていった。
私は天城くんの言葉の意味を理解できないまま家に入った。
「亜美。おかえり。」
「………ただいま。」
玄関でお母さんが迎えてくれた。
「怪我は大丈夫なの?」
「え?」
お母さんはニコッと笑う。
「天城康太くんって子が電話してきてね。「亜美さんに怪我させてしまいました。すみません。責任取ります。」って確か天城くんって…………学年トップの子よね?」
「……何で?」
私はお母さんの問いに答えず部屋へ向かった。
部屋に入った途端に涙が出てきた。
「関わるなって何よ。責任って何よ。天城くんが分かんない。私を頼ってよ。信じてよ…………」
今まで私は天城くんの何を見てきたんだろう。
勝手に心開いてくれたとか思って天城くんを好きになって。
天城くんは私のことなんて何とも思ってないのに……
何でいつもいつも一人で解決しようとするの?
何で一人で悩むの?
何で何にも言ってくれないの?
私はそんな事を考えながら涙を流した。
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