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俊也としばらく歩いていると、人気のない神社に着いた。
「ここね、花火きれいに見えるんだ。」
俊也はそう言って石段に座る。
私もつられて俊也の隣に座った。
そしてしばらくの無言。
俊也をチラッと見ると俊也と目があった。
「 」
俊也が口を開いた瞬間、花火が鳴った。
けど私には花火の音なんかより俊也の声のほうが鮮明に聞こえた。
「好きだよ。亜美。」
俊也は真剣な顔で私を見つめそう言った。
整った顔に大きな瞳で見つめてくるから私は目が反らせない。
「ずっと前から好きだったんだ。」
次の言葉がうまく出てこない。
俊也は好き。
だって、優しいしおもしろい。
それに何より一緒にいて楽しいから。
でもその好きは恋愛感情じゃなくて……
そんな事を考えていたら涙が出てきた。
「ふぇ……う…」
「ちょっ!?あみたん?」
俊也は慌てて私の涙を指で拭う。
「俊也は好きだけど友達として好きなのだから…………ごめん。」
やっとの思いで言った言葉に俊也は「そっか。」と言って私の頭を撫でた。
俊也の優しさに、俊也を傷付けてしまった事にまた涙が溢れ出す。
「ごめんね、私………天城くんが好きなの。」
私が顔を上げるとひどく悲しそうな俊也の笑顔があった。
「やっぱりな……」
俊也はポンポンと私の頭を優しく叩く。
「何となく分かってたよ。あみたん。これからも友達でいてね。」
「うん、俊也ごめん。本当にごめん。」
いつの間にか花火は終わっていた。
俊也は私に手を振って帰って行った。
私も俊也に手を振って帰り道を歩き出した。
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