09.花火大会

7/8
前へ
/131ページ
次へ
俊也としばらく歩いていると、人気のない神社に着いた。 「ここね、花火きれいに見えるんだ。」 俊也はそう言って石段に座る。 私もつられて俊也の隣に座った。 そしてしばらくの無言。 俊也をチラッと見ると俊也と目があった。 「   」 俊也が口を開いた瞬間、花火が鳴った。 けど私には花火の音なんかより俊也の声のほうが鮮明に聞こえた。 「好きだよ。亜美。」 俊也は真剣な顔で私を見つめそう言った。 整った顔に大きな瞳で見つめてくるから私は目が反らせない。 「ずっと前から好きだったんだ。」 次の言葉がうまく出てこない。 俊也は好き。 だって、優しいしおもしろい。 それに何より一緒にいて楽しいから。 でもその好きは恋愛感情じゃなくて…… そんな事を考えていたら涙が出てきた。 「ふぇ……う…」 「ちょっ!?あみたん?」 俊也は慌てて私の涙を指で拭う。 「俊也は好きだけど友達として好きなのだから…………ごめん。」 やっとの思いで言った言葉に俊也は「そっか。」と言って私の頭を撫でた。 俊也の優しさに、俊也を傷付けてしまった事にまた涙が溢れ出す。 「ごめんね、私………天城くんが好きなの。」 私が顔を上げるとひどく悲しそうな俊也の笑顔があった。 「やっぱりな……」 俊也はポンポンと私の頭を優しく叩く。 「何となく分かってたよ。あみたん。これからも友達でいてね。」 「うん、俊也ごめん。本当にごめん。」 いつの間にか花火は終わっていた。 俊也は私に手を振って帰って行った。 私も俊也に手を振って帰り道を歩き出した。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

506人が本棚に入れています
本棚に追加