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「あ…あ……」
マトは足下に視線を落とす。マトの方に手を伸ばした状態で血塗れになって倒れたラナが着ていた服を着た頭の無い死体。ラナの身体だった。
「う…そ?ラナ?ラナ!」
マトはラナの頭に駆け寄り、持ち上げて揺する。何度もラナの名前を呼ぶが、当然の如く返事はない。
『グルルルル…』
マトの声を聞き付けた犬達は新たな獲物へと集まって来た。数は10。マトの逃げ道を塞ぐように半円になってマトを囲む。
「うっ…ううぅ……」
マトは泣いていた。そして
「ウヴア゛ア゛ア゛ア゛ア!!」
哭いた。
ラナの頭を胸に抱き、鋭い目付きで犬達を睨み付ける。
「う゛う゛う゛う゛う゛…」
マトは空いている右腕を自分の左肩の高さまで上げ、一気に斜めに振り下ろす。
パキーーン
一瞬にして蒼い光が集い、弾ける。マトの手には黒塗りの日本刀のような剣。腹に蒼い稲妻のような装飾を施された剣を後ろに引いたマトは、地面を蹴った。
『グ!?』
犬達がマトの動きに反応する。が、マトのスピードは犬達の反応速度を上回っていた。一瞬にして一匹の口に刃を当て、二枚に卸す。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
沸き上がる衝動に身を任せ、涙の軌跡を描きながらマトは剣を振るった。
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