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やがて少女は起き上がるのを諦め、ベッドに身を沈めた。その様子を見て、女の子はホッと息を吐く。
「アタシはラナ。歳は10歳!…お姉ちゃんは?」
ラナと名乗った女の子は少女の顔を覗き込みながら尋ねる。
少女はラナを見つめ返すが、何も言わない。
「…ん?お姉ちゃんの名前は?」
「…な…まえ?」
「そ、名前!」
「なまえ…」
少女は天井に視線を戻し呟く。そんな少女の様子を見てラナは不安になる。
「お姉ちゃん…名前…分からないの?」
「……ト…」
微かに少女の唇が動く。
「え?」
「…マ…ト…?」
「マト?それがお姉ちゃんの名前?」
しかし少女は首を横に振る。
「分からない…。何も……分からない…」
少女の顔は歪み、泣きそうな表情になる。
「分からない…コワイ……コワイ?胸が…ザワザワする…」
少女はイヤイヤするように首を振る。ラナはそんな少女の頭に手を当て、手櫛で少女の髪を鋤いて撫でる。
「お姉ちゃん…大丈夫だよ?」
「あ……うん」
少女の表情に安堵の色が宿り、少女は目を閉じる。ラナが頭を撫で続けていると、少女から小さく規則的な寝息が漏れてきた。
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