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「寝ちゃった…?」
ラナは少女から返事が無く、穏やかな呼吸を確認した後に桶の水を変えてから濡らした布を少女の額に置いて退室した。
「ラナ」
部屋の外に出たラナは白髪頭の腰の曲がった老人に呼ばれ、振り向いた。
「あ、何ですか?」
ラナの暮らす砂漠の外にある荒野の地下に造られた集落の長である老人にラナは駆け寄った。
「あの娘は?」
「さっき起きたんですがまた寝ちゃいました」
「そうか…」
老人は少女の眠る小屋に目を向ける。その目には何か思うところがあるようで、ラナは首を傾げた。
「どうかしたんですか?」
「…いや、昔…ワシの若い頃に会った少女に似ていたのでな。気になるのじゃよ…」
「はあ…」
ラナも老人と同じように小屋へ視線を向け、ゆっくりと頷いた。
「ラナ、あの娘の世話は頼んだぞ?」
「はい」
ラナは元気良く頷くと老人に一礼してから集落の奥、彼女の家へと駆けて行った。
ラナが暗がりに消えたところで老人は少女の眠る小屋の扉を開け、中を覗き込み眠っている少女を見つめた。
「やはり…似ておる……」
静かに眠る少女を見つめた後、老人は少女を起こさないよう静かに扉を閉めた。
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