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こらこら……
私のことはほったらかしで話を進めないでください…
篠崎さんがご機嫌な理由は、今夜のことだろうな…
きっと、その話があるんだよね?
「…分かりました。城田さん、水嶋さん、行ってきます」
お弁当の袋を持つと、篠崎さんの後ろをついて行く。
「小万里ちゃん、今夜は実を借りるね?」
休憩ルームの椅子に腰掛けた篠崎さんの開口一番はその言葉で…
「昨夜、遅くに電話が来てさ、やっと落ち着くから呑みに行こうって誘われたよ」
えっ!…篠崎さんには電話したんだ……
……私にはメールだったのに。
なんだか胸がモヤモヤした。
「朝からご機嫌でしたもんね。楽しんで来てください」
あっ…いけない…
少しだけ…口調がきつくなっちゃったかな。
「余裕だね。指輪ももらったようだし…」
私の右手を見ながら、篠崎さんは少し淋しそうな顔をした。
「そんなんじゃありません」
「じゃぁ何?やきもち?」
篠崎さんは、お弁当の唐揚げを箸で摘まみながら、私の顔を覗き込んだ。
「ちっ…違います」
私はあわてて否定したけど…このモヤモヤはやきもち以外のなにものでもないことは、分かっていた。
でも、認めたくなくて…
ニューヨークに出張してた時と今では、実さんの態度が明らかに違うから…
「…もしかして、実と会えてないの?」
うっ…
篠崎さん、鋭い。
私は、口の中の玉子焼きをお茶で流し込み、頷いた後に半ば自棄気味に言った。
「今週は、忙しくて会えないって言われてましたから。
それに、今夜からお姉ちゃんの引っ越しの手伝いに行くから、週末も会えませんし……」
「ふーん…でも声は聞いてるでしょ?」
また…
何で、この人はこうも鋭い質問をしてくるんだろう?
「いいえ…話してません。メールを一方的に送るだけで、返信もあまりなかったし…」
「えっ?じゃあ…電話すればよかったんじゃないの?」
出来れば、したかった。
声だけでも聞きたかった。
でもね…
「電話は掛けないでって言われたんです、忙しいからって」
驚いた顔の篠崎さん。
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