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ベンチに座り、辺りを見回す。
天気がいいからか、日向ぼっこしているご老人が多い。
子供たちも、駆け回って遊んだり、親らしき人と笑いあっている。
若い人たちもそれぞれの好きなことをして楽しんでて…。
私、やっぱり人間って好きだなー。
そりゃ、森を壊すのは許せないけど、見てるととても楽しくなる。
「ノノちゃんとユエちゃんも、あれだけの力持ってるんだから人間に化けることくらい簡単なくせにー。どうして嫌がるのかな?あああああ!気になる!」
小さい独り言(?)を呟いてると、周りの雰囲気がザワッてなった。
この感じ…。
驚いて辺りを見回すと、小さい池を見下ろしている子供がいた。
その子供の足に、池から出た妖怪の手が伸びてきている。
―危ない!―
そう思って、立ち上がった、その時、
パキィッ・・・
聞き覚えのある音に、動きを止める。
辺りを見回すと、さっきまで動いていた人たちの時間が止まっていた。
これをできるのは…。
「ユエちゃん!?」
「はぁーい」
上の方から声がした。
見上げると、木の枝に腰掛けているユエちゃんがいた。
カラス天狗のユエちゃんの背中には、カラスのツバサが生え、白と黒の装束を着ている。
どうやら、私とノノちゃんの中で一番生きているらしく、時間を止める術を使えるんだって。
「ユ、ユエちゃん!あの池から出てる妖怪、何!?」
「あれ、妖怪じゃないよ、幽霊。あの池で溺れ死んだ子供の霊だと思うよ」
あ、幽霊なんだ…。
思わず、妖怪って思っちゃったよ。
「た、助けなきゃ!」
「いやー、その必要ないでしょ」
「え、何で!?」
ユエちゃん、なんでそんな冷静なの!?
ちょっとうらやましい!
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